脳を鍛えるには運動しかない
脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方
- 作者: ジョン J.レイティ,エリックヘイガーマン,John J. Ratey,Eric Hagerman,野中香方子
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2009/03
- メディア: 単行本
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運動の効果が科学的に書かれているということで期待して読んだのですが、正直がっかりでした。期待値が高すぎたのかもしれません。
①エピソードが多い
面白い話もありますが、多くのエピソードは誰々に運動させたら○○が良くなったといったものです。多少のエピソードは読む人の興味を引くのに役立つと思いますが、この本ではちょっと多すぎるように感じました。
②メカニズムについての話が多い
運動がどのような経路で効果を発揮するかという話が多く書かれており、遊離脂肪酸とかトリプトファンとかガンマアミノ酢酸といった難しい単語が頻繁に登場します。
僕のような一般読者には、運動することで寿命が延びたとか鬱や不安が軽くなったという話は重要ですが、運動がどのように健康やメンタルに作用するかといった話は難しすぎるし重要ではないと思います。
そもそもこういった話がどこまで本当なのかよくわからない気もします。著者自身も脳内で起こっていることは分からないことの方が多いと書いています。
これらのエピソードやメカニズムの話が多いために300Pを超える分厚い本になってしまっています。
③信頼性についての疑問
例えば不安の項目で紹介している研究は4~5個で、あとは数多くの証拠があると書いているだけです。これまでにどれくらいの数の研究が行われているのか、WTOなどの国際機関はどういう見解なのか、否定的な研究はないのか、メタ分析や系統的レビューはどうかといった解説が欲しいと思いました。
自分に都合のいい研究だけを取り上げることもできるので、この本のように何個かの研究を紹介しているだけでは信頼性を判断するのが難しいと思います。
また、鬱の項目では、大規模な研究をいくつか紹介して有効なのは間違いないといった感じで話をすすめていますが、日本うつ病学会のガイドラインでは「運動の効果については否定的な報告もあり、まだ確立した治療法とは言えない」となっています。全体を通して著者の(運動の効果に対する)楽観的・断言的な態度は疑問に感じました。
ポジティブ心理学のメタアナリシス
ポジティブ心理学による介入効果のメタ分析を読みました。
Positive psychology interventions: a meta-analysis of randomized controlled studies
39件のランダム化比較試験(合計6139人)をメタ分析した論文です。
ポジティブ心理学による介入は主観的幸福や心理的幸福を高めるのに、また抑鬱症状を減らすのに効果があるとの結果でした。ただし、その平均的な介入効果は小さな値でした(cohen's d : 主観的幸福0.34、心理的幸福0.2、抑うつ0.23)。
3~6か月のフォローアップでは、主観的幸福・心理的幸福の改善は小さいものの依然として有効であり、ポジティブ心理学の介入効果が持続することを示唆しているとのことです。
著者らによると、同様のメタ分析は Sin and Lyubomirsky(2009)も行っており、ポジティブ心理学の介入効果は著者らの研究よりもかなり大きくなっています(cohen's d : ウェルビーイング0.61、抑うつ症状0.65)。
しかし、彼らの研究は、無作為ランダム研究とそれ以外の研究?(quasi-experimental studies)の両方を含んでいること、研究の質に言及されていないこと、研究の組み入れ規準が明確でない、などの問題もあるそうです。
著者らの研究では、ランダム化比較試験のみを対象とする、研究の質を考慮する、直後の効果だけではなくフォローアップの分析も行う、介入のタイプや研究デザインに明確な基準を用いる、といった違いがあります。
なお、ポジティブ心理学の介入は以下のようなものです。
・ありがたいことを数える
・親切を行う
・個人的な目標を設定する
・感謝を表明する
・個人的な強みを使う
etc
一方で、ポジティブ心理学とかかわりがあるものの、純粋にポジティブ心理学と言えない介入 : ウェルビーイング改善を目的とした身体的エクササイズ、マインドフルネスや瞑想、ライフレビュー、などは除かれています(Sin and Lyubomirskyはこれらも対象としている)。
ちなみに、上記のようにさまざまなタイプの介入をまとめて分析しているのは問題点として挙げられています。将来的には個々の技法がマインドフルネスのように個別に分析されるべきだと言っていますが、いまはまだ数が少なすぎるとのことです。
結果についての注意点もいろいろ書かれています。
研究の質が総じて低いこと、さまざまなタイプの介入が一緒に分析されていること、研究の数の少なさ、フォローアップの欠損率の高さ、出版バイアス、など。このため結果の数字は注意して扱わなければならないとのこと。
読んでみた感想です。
とりあえずは、このようにしっかりしたメタ分析が出てきたこと、ポジティブ心理学の介入が小さいながらも効果があった、という点は良かったのだと思います。
研究の質が低いのは残念ですが、まだ発展途上な分野ということで仕方ないのかなと思います。質の高い研究が出てくるのに期待ですね。
○メモ
・PubMed, PsychInfo, the Cochrane register, のシステマティック検索とマニュアル検索。規準を満たしたのは39の研究。トータルの参加者は6139人(4043介入群、2096コントロール群)。
・1998年(ポジティブ心理学ムーブメントのスタート)から2012年11月までの期間の研究。
・ランダム化比較試験が対象。39の研究のうち、10の研究は介入なし群、17の研究はプラセボ群、7の研究はウェイティングリスト群、5の研究は通常治療群との比較。
・ポジティブ心理学の介入の結果は、主観的幸福、心理的幸福、抑鬱症状(depression)、のいずれかを使って測られていること。
・ポジティ心理学の介入は、セルフヘルプ、グループトレーニング、個人セラピーを含む。対象者は一般の人と心理的問題のある人。
・研究の質は6つの規準(適切なランダム化、盲検法、ベースライン比較、人数、フォローアップ、欠測データ)でレーティングする。20の研究が質が低い(1~2点)、18が中くらいの質(3~4点)、1つが質が高い(5~6点)と判定された。6つの規準すべてを満たした研究はなし。(M=2.56、SD=1.25)
・メタアナリシスの手順のところは理解不能でした。
冷淡な傍観者
- 作者: ビブラタネ,ジョン・M.ダーリー,Bibb Latan´e,John M. Darley,竹村研一,杉崎和子
- 出版社/メーカー: ブレーン出版
- 発売日: 1997/06
- メディア: 単行本
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緊急事態における援助行動についての研究を解説した本です。真面目で学問的な内容。
著者たちの研究のきっかけ(のひとつ)となったのはキティ・ジェノヴィーズ事件です。
午後三時、仕事から帰る途中のキティー・ジェノヴィーズを待ち伏せしていたのは一人の変質者であった。そのキュー・ガーディンの住人の三八人もが彼女の悲鳴を聞きつけて窓から顔を出した。が、彼女を助けに駆けつけた人間は一人もいなかった。加害者が彼女を殺すまでに三〇分もあったというのに、誰一人、警察に電話した者さえいなかったのだ。彼女は死んだ。
この事件に対して評論家やテレビでは、都会の無関心、道徳心が減った、といった解説がされたそうです。
しかし、目撃者たちは何もしなかったが無関心だったわけではなく困り果てていたこと、記事にはならないが人々が行動を起こす事件もあること、などの理由から、このような単純な解説に対して著者らは疑問を投げかけます。
そしてなぜ援助が与えられる場合と与えられない場合があるのか?助ける助けないの決定に影響を及ぼす要因は何か?を確かめるために一連の実験を行います。
○非緊急事態での援助
・時間を尋ねる、10セントを借りる、などの小さな頼みごと。
・道でチョコレートを配る。
・被験者の隣でさくらが間違った道を教える。訂正をするか。
・さくらの行動(遊びに加わるか叱るか)の後のフリスビー遊びへの参加率。
上のような実験を条件を変えつつ多数行っています。たとえば小銭を借りる実験では、理由をつける、名前を名乗る、屋内か屋外か、性別や人数の違い、などの条件での結果が書かれています。
著者らは、ちょっとした状況の違いによって援助の有無が大きく左右されたことから、被験者は人助けの報酬や費用を計算しそれに応じて自分の行動を変えている、と言っています。
ex...
危害を加えそうな人が間違った道を教えているのを訂正する率は低いが、自信のなさそうに教えている人を訂正する率は高い。
さくらが遊びに加わった場合はフリスビー遊びへの参加率が高いが、さくらが叱りつけた場合の参加率はゼロだった。
○緊急事態の援助
・インタヴューを待つ部屋に煙が入ってくる。外に出て報告するか。
・質問票に記入している部屋の隣から椅子が倒れる音と女性の悲鳴やうめき声が聞こえる。
・盗みを目撃させる。
・隣室で子供の喧嘩(乱暴)が始まる。
・ヘッドホンを通して討論に参加している被験者にてんかんに似た発作の声を聞かせる。
・地下鉄と空港で、松葉杖の男が転び痛そうに顔をしかめる。
一連の実験の結果から、援助行動の決定要因としては、性格や生い立ちといった個人差よりもその場の状況の方がはるかに重要であると結論しています。場合によっては誰でも援助をするし、場合によっては誰でも援助をしないということです。
また、いずれのケースにおいても人数が増えることで援助の可能性が少なくなったことから、他人の存在が人助けを抑制する最も大きい要因の一つであると言っています。
○緊急事態における援助行動の難しさ
・高価な代価と不当に低い報酬。緊急事態においては介入した人も危険にさらされる。一方でうまくいった場合でも事態の悪化を防ぐだけであり、ほとんど報酬は期待できない。
・まれなできごとである。一生を通じて緊急事態に遭遇することはほとんどない。経験もなければ事前の訓練や準備もない。突発的に起こるためゆっくり考える余裕すらない。
こうした状況で介入行動を起こすというのはむしろ驚くべきことだとのこと。
○傍観者効果
・たくさんの人がいればそれだけ面目を失う可能性も高い。大勢の人の前で恥はかきたくない。
・自分の行動の手本を他人に求めようとする。誰も心配していないのだから何事もないのだ、などの判断。
・緊急事態に1人で直面した場合はその人が全責任を負わされる。他に見ている人がいれば見物人全員が責任を分かち合うことになり、1人への圧力は小さくなる。
○緊急事態の存在の否定
・緊急事態の介入には大きな代価を伴うが、介入を行わない場合も恥の意識や罪悪感といった心理的な代価がある。回避-回避の葛藤。
・最も安易な逃げ道は緊急事態が存在しないのだと自分自身に信じ込ませること。緊急事態に気づかなければ、あるいは状況が深刻ではないと判断できれば、介入を行うべきか悩む必要がなくなる。
・実験後の面接で介入しなかった被験者はその場面を緊急事態だと思わなかったとしばしば訴えた。介入の葛藤から逃れるために状況を歪めて解釈しようとする可能性がある。
○その他
・煙の実験では、介入しなかった被験者も無関心なわけではなく情緒的に動揺していた。
・不決断の時間が長引くほどその後の介入は困難になる。煙の実験では反応を示した被験者の90%以上が比較的短いテスト時間の前半にそれを行った。
・いずれの実験においても、被験者はまわりの影響に気づかないか認めようとしなかった。自分の行動は他人の存在とは関係なかったと主張した。
・いくつかの性格テストからは援助行動を予測できる性格特性は発見できなかった。生育歴の情報もとりたてて有効ではなかった。
○緊急事態においての援助行動のプロセス
1. 緊急事態への注意。まず第一に何かが起こったということに気づかなければならない。
2. 緊急事態発生という判断。いったん事件を認識したら、今度はそれが緊急の事態だと解釈することが必要になる。
ex...歩道にうずくまった男がいる。緊急事態なのか、変人なのか、酔っ払いが寝ているのか。
3. 個人的責任の度合いの決定。行動を起こすのが自分の個人的な責任なのだという決定を下さなければならない。
ex...もう援助が始まっているかもしれない、当人に援助の能力があるか、自分は適役か、責任が何人の傍観者に分担されているか。
4. 特定の介入様式の決定。責任を自覚した場合、どのように対処すべきかを決めなければならない。
ex...自分が直接的に介入すべきなのか、医者や警察を呼ぶなど間接的な方法をとるべきか。
5. 介入の実行。どのように介入するかを決めたら最後に実際の行動だけが残される。
この研究は「心理学を変えた40の研究」という本でも紹介されています。それによると、傍観者効果について学んだ人たちは緊急時に援助行動を起こす傾向が強いことが研究によって分かっているそうです。また、結論にはこう書かれています。「他の人が干渉するだろう、止めるだろうとは絶対に思ってはいけない。いつも自分が1人であるかのように行動しなさい。」
なぜ選ぶたびに後悔するのか
新装版 なぜ選ぶたびに後悔するのか オプション過剰時代の賢い選択術
- 作者: バリーシュワルツ,瑞穂のりこ
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2012/10/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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選択の問題について書かれた本です。
一般に選択肢が増えることは良いことだと思われています。実際にも選択肢を持つことは自主性や管理能力や解放感といった良い感情をもたらすとのことです。
しかし、選択にはネガティブな側面もあり、選択肢が増えすぎるとこのネガティブな影響が大きくなり満足感の低下や苦しみにつながってしまうそうです。
本書では、この選択のネガティブ面にはどのようなものがあるのかということや、過剰な選択肢にあふれている現代の私たちはこの問題にどう対応したら良いのかといった話が書かれています。
ある調査によると・・・のように詳細が書かれていなかったり、参考文献は挙げられていないので書かれていることがどこまで定説なのかはよくわかりませんでした。ただ、選択のネガティブ面や意思決定における態度の違い(マキシマイザーかサティスファイサーか)など、直感的に納得できる内容が多くて面白く読めました。
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ポジティブ病の国、アメリカ
- 作者: バーバラ・エーレンライク,中島由華
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/04/10
- メディア: ハードカバー
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アメリカで一般的になっているポジティブ・シンキングや楽観主義を痛烈に批判した本です。
第1章では、著者が乳がんになったときの体験から、ポジティブな態度のみが賞賛され、ネガティブな感情を抑圧しなければならないことへの違和感や不満が書かれています。乳がんになる前よりも幸せだ、人生を考えなおすきっかけをくれた、乳がんは感謝すべき贈り物だ、といった話は感動的ですが、それが義務になってしまうのは確かにきついかなと思いました。
また、否定的な論文も出ているにもかかわらず、楽観的な態度には延命効果があることが当然と信じられている点も批判しています。この話があまりにも広く信じられているため、ポジティブシンキングが不十分なせいでがんが進行したり治癒しないと自分を責めるようになる人もいるとのこと。これもひどい話です。
第2章は、コーチングや自己啓発についてです。著者は、ポジティブな態度と成功には(ポジティブな人は受け入れられやすいなど)自己予言的な面があるとしつつも、心の持ち方だけではどうにもならない現実があるともっともな指摘をしています。また、「引き寄せの法則」など極端なポジティブシンキングはもはや魔術と変わらないも言っています。
第3章以下は、アメリカにおけるポジティブシンキングの歴史、ビジネスの世界や宗教の世界でのポジティブシンキングの現状、新たに登場したポジティブ心理学について、経済とポジティブシンキング、といった話が続きます。
最終章では、ポジティブ・シンキングに代わる方法として、防衛的悲観主義や批判的思考ありのままに見る現実主義の大切さなどに触れていますが、それほど詳しい解説はありませんでした。
ポジティブとがんの生存率など資料を引用している部分もありますが、基本的には主観的な内容の本です。なので、もっともだと思える指摘(ポジティブ・シンキングが義務になってしまっていること、望めば何でもかなうといった非現実的な楽観主義、すべてを個人の心の持ち方のせいにして経済的な不平等などの問題を無視すること)もありましたが、資本主義はもう行き詰っているといった思いつきのような批判も多かったです。
ポジティブ心理学についても、相関関係と因果関係の違い、不十分な証拠を確実な証拠のように言う、美徳の規準があいまい、など納得のいく指摘もあるのですが、セリグマンについての個人的な批判など本筋と関係ない部分の話が多かったです。
ポジティブ心理学にさまざまな問題があるのは確かだと思いますが、幸福度の調査は世界各国で20年30年にわたって行われており、それなりの研究結果が蓄積されているわけです。それに対する批判としてはあまり建設的でない話が多かったように思います。
文量もけっこう多いですし、根拠にもとづく話が書かれているわけではないので、ちょっとどうかなと感じる部分もありました。ただ、楽観主義やポジティブシンキングについては無条件に肯定している本が多いなかで、このように全面的に批判している本は貴重ではあると思います。バランスを取るために読むのもいいのではという感想です。
幸福の習慣
- 作者: トム・ラス,ジム・ハーター,森川里美
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2011/10/16
- メディア: 単行本
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どんな習慣や行動が幸福度を高めるのかということを解説した本です。
本書の内容は、世論調査会社のギャラップが行っている幸福に関する調査の結果をベースに書かれています。
ギャラップ社の調査は、世界150か国・無作為に抽出した1000人以上(合計15万人以上)を対象に、数百問にわたる質問を通して「人生全体をどのように評価しているのか」についてデータを取っているそうです。
書かれている内容はどの話も根拠となる資料をしっかり示していて信頼感があります。巻末の参考文献リストも充実しており、引用した資料・論文についての簡単な解説までついています。
本書のいちばん良かった点は、学術的な内容にもかかわらずとても読みやすく書かれていた点です。通俗心理学の本のようにサクサク読めます。統計的・学問的な話をここまで平坦に読みやすく書けるのは素晴らしいと思いました。
ちょっと注意が必要かなと思った点は、
①遺伝について何も書かれておらず、環境的な要素にのみ焦点が絞られています。
②(ある意味で題名どおりですが)出典としてギャラップ社の調査が多いです。幸福度についての調査は多いので、もっと他の文献の話も取り入れてくれてもいい気がしました。
③ギャラップ調査の詳細や結果が書かれていないのが残念でした。詳細が書かれていないので、なぜ著者が5項目を選んだのか読者からすると不明です。巻末資料も充実しているので、どんな手順を踏んでどんな結果が出たのかを書いてくれても良かったのではと思いました。
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人生に意味はあるか
題名どおり「生きる意味」について書かれた本です。
宗教家、作家、哲学家、スピリチュアリスト、精神科医、といった古今東西の著名人の考えを紹介したあとに著者の答えが書かれてます。
著者の答えにはスピリチュアル系が入っているので賛否ありそうですが、他の著名人たちの考えを手軽に知ることができるのは良かったです。元の本を読もうとすると10冊を超えてしまいかなりの手間がかかりそうなので、このようにコンパクトにまとめてくれるのはありがたいと思いました。
文章も難しい言葉が少なくて読みやすいです。生きる意味について考えたいけど、どの本から読んだらいいかわからないという人におすすめできると思います。
ただ、紹介している人の選択には少し疑問がありました。宗教ではキリスト教・仏教といった本家を正面から取り上げていませんし、科学の分野の話題(進化論など)はまったく書かれていません。
著者の答えは本の最後にまとめられています。
一つ、"人生のほんとうの意味と目的"をどこまでも深く探し求め続けるため。最後まで求めぬくため。
二つ、その極限において、究極のリアリティである"いのちのはたらき"に目覚めるため。そして、この私も、ほかならないその"はたらき"がとった一つの形であることに-"いのちが私している"という真理に-目覚めて生きるため。
三つ、今あなたが置かれている状況からの日々の問いかけに応え、あなたの人生に与えられた使命を果たし、"未完のシナリオ"を完成させていくため。
独特なのが2つめの"いのちのはたらき"でしょう。
この世界や宇宙はもともとひとつのエネルギーのようなもので、それがあるときは花の形をあるときは人の形をとり、変化しながらも不滅である、すべてはつながっていてひとつである、といった考え方のようで、体験をとおしてこの真理に目覚めることが必要になるらしいです。
個人的には、著者の話はそれほど突飛なものに感じませんでした。
人の身体はタンパク質や脂質でできていて、それは分子とか原子であって、もともとはパンとかご飯といった食事から作られたものだし、自分が死ねば土に返ってそこから草木になったりするのだから、世界がひとつにつながっているのにエネルギーを持ち出す必要はない気がします。
また、宇宙は無限に近い数も存在するとか、次元は10も20もあるとかいう仮説もあるようなので、原子をさらに分解していけば何かエネルギーのようなものにたどり着く可能性だってありそうです。生きているあいだに証明はできないでしょうけど。
問題は、仮にそのようなものがあったとして、それが生きる意味にどうつながるかという点です。「この「はたらき」そのものをじゅうぶんに生きること」と著者は書いていますが、ちょっと漠然としているし、人生の選択肢で具体的な手助けになるかというとやや疑わしく感じました。
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