ポジティブ心理学のメタアナリシス

ポジティブ心理学による介入効果のメタ分析を読みました。
Positive psychology interventions: a meta-analysis of randomized controlled studies

 

39件のランダム化比較試験(合計6139人)をメタ分析した論文です。

ポジティブ心理学による介入は主観的幸福や心理的幸福を高めるのに、また抑鬱症状を減らすのに効果があるとの結果でした。ただし、その平均的な介入効果は小さな値でした(cohen's d : 主観的幸福0.34、心理的幸福0.2、抑うつ0.23)

3~6か月のフォローアップでは、主観的幸福・心理的幸福の改善は小さいものの依然として有効であり、ポジティブ心理学の介入効果が持続することを示唆しているとのことです。

 

著者らによると、同様のメタ分析は Sin and Lyubomirsky(2009)も行っており、ポジティブ心理学の介入効果は著者らの研究よりもかなり大きくなっています(cohen's d : ウェルビーイング0.61、抑うつ症状0.65)。

しかし、彼らの研究は、無作為ランダム研究とそれ以外の研究?(quasi-experimental studies)の両方を含んでいること、研究の質に言及されていないこと、研究の組み入れ規準が明確でない、などの問題もあるそうです

著者らの研究では、ランダム化比較試験のみを対象とする、研究の質を考慮する、直後の効果だけではなくフォローアップの分析も行う、介入のタイプや研究デザインに明確な基準を用いる、といった違いがあります。

 

なお、ポジティブ心理学の介入は以下のようなものです。

・ありがたいことを数える
・親切を行う
・個人的な目標を設定する
・感謝を表明する
・個人的な強みを使う
etc

一方で、ポジティブ心理学とかかわりがあるものの、純粋にポジティブ心理学と言えない介入 : ウェルビーイング改善を目的とした身体的エクササイズ、マインドフルネスや瞑想、ライフレビュー、などは除かれています(Sin and Lyubomirskyはこれらも対象としている)。

ちなみに、上記のようにさまざまなタイプの介入をまとめて分析しているのは問題点として挙げられています。将来的には個々の技法がマインドフルネスのように個別に分析されるべきだと言っていますが、いまはまだ数が少なすぎるとのことです。

 

結果についての注意点もいろいろ書かれています。
研究の質が総じて低いこと、さまざまなタイプの介入が一緒に分析されていること、研究の数の少なさ、フォローアップの欠損率の高さ、出版バイアス、など。このため結果の数字は注意して扱わなければならないとのこと。

 

読んでみた感想です。

とりあえずは、このようにしっかりしたメタ分析が出てきたこと、ポジティブ心理学の介入が小さいながらも効果があった、という点は良かったのだと思います。

研究の質が低いのは残念ですが、まだ発展途上な分野ということで仕方ないのかなと思います。質の高い研究が出てくるのに期待ですね。

 

○メモ

PubMed, PsychInfo, the Cochrane register, のシステマティック検索とマニュアル検索。規準を満たしたのは39の研究。トータルの参加者は6139人(4043介入群、2096コントロール群)。

・1998年(ポジティブ心理学ムーブメントのスタート)から2012年11月までの期間の研究。

ランダム化比較試験が対象。39の研究のうち、10の研究は介入なし群、17の研究はプラセボ群、7の研究はウェイティングリスト群、5の研究は通常治療群との比較。

ポジティブ心理学の介入の結果は、主観的幸福、心理的幸福、抑鬱症状(depression)、のいずれかを使って測られていること。

・ポジティ心理学の介入は、セルフヘルプ、グループトレーニング、個人セラピーを含む。対象者は一般の人と心理的問題のある人。

 

・研究の質は6つの規準(適切なランダム化、盲検法、ベースライン比較、人数、フォローアップ、欠測データ)でレーティングする。20の研究が質が低い(1~2点)、18が中くらいの質(3~4点)、1つが質が高い(5~6点)と判定された。6つの規準すべてを満たした研究はなし。(M=2.56、SD=1.25)

 

・メタアナリシスの手順のところは理解不能でした。