脳を鍛えるには運動しかない

 

脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方

脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方

 

運動の効果が科学的に書かれているということで期待して読んだのですが、正直がっかりでした。期待値が高すぎたのかもしれません。

①エピソードが多い

面白い話もありますが、多くのエピソードは誰々に運動させたら○○が良くなったといったものです。多少のエピソードは読む人の興味を引くのに役立つと思いますが、この本ではちょっと多すぎるように感じました。

②メカニズムについての話が多い

運動がどのような経路で効果を発揮するかという話が多く書かれており、遊離脂肪酸とかトリプトファンとかガンマアミノ酢酸といった難しい単語が頻繁に登場します。

僕のような一般読者には、運動することで寿命が延びたとか鬱や不安が軽くなったという話は重要ですが、運動がどのように健康やメンタルに作用するかといった話は難しすぎるし重要ではないと思います。

そもそもこういった話がどこまで本当なのかよくわからない気もします。著者自身も脳内で起こっていることは分からないことの方が多いと書いています。

これらのエピソードやメカニズムの話が多いために300Pを超える分厚い本になってしまっています。

③信頼性についての疑問

例えば不安の項目で紹介している研究は4~5個で、あとは数多くの証拠があると書いているだけです。これまでにどれくらいの数の研究が行われているのか、WTOなどの国際機関はどういう見解なのか、否定的な研究はないのか、メタ分析や系統的レビューはどうかといった解説が欲しいと思いました。
自分に都合のいい研究だけを取り上げることもできるので、この本のように何個かの研究を紹介しているだけでは信頼性を判断するのが難しいと思います。

また、鬱の項目では、大規模な研究をいくつか紹介して有効なのは間違いないといった感じで話をすすめていますが、日本うつ病学会のガイドラインでは「運動の効果については否定的な報告もあり、まだ確立した治療法とは言えない」となっています。全体を通して著者の(運動の効果に対する)楽観的・断言的な態度は疑問に感じました。