なぜ選ぶたびに後悔するのか

 

新装版 なぜ選ぶたびに後悔するのか オプション過剰時代の賢い選択術

新装版 なぜ選ぶたびに後悔するのか オプション過剰時代の賢い選択術

  • 作者: バリーシュワルツ,瑞穂のりこ
  • 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
  • 発売日: 2012/10/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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選択の問題について書かれた本です。

一般に選択肢が増えることは良いことだと思われています。実際にも選択肢を持つことは自主性や管理能力や解放感といった良い感情をもたらすとのことです。
しかし、選択にはネガティブな側面もあり、選択肢が増えすぎるとこのネガティブな影響が大きくなり満足感の低下や苦しみにつながってしまうそうです。
本書では、この選択のネガティブ面にはどのようなものがあるのかということや、過剰な選択肢にあふれている現代の私たちはこの問題にどう対応したら良いのかといった話が書かれています。

ある調査によると・・・のように詳細が書かれていなかったり、参考文献は挙げられていないので書かれていることがどこまで定説なのかはよくわかりませんでした。ただ、選択のネガティブ面や意思決定における態度の違い(マキシマイザーかサティスファイサーか)など、直感的に納得できる内容が多くて面白く読めました。

 

○選択や選択肢の増加のネガティブ面

著者によると、選択肢の増加がもたらすマイナス効果はおもに次の3つだそうです。

・決断に必要な時間と労力が増す。正しい決断をしようとすると情報を吟味しなければならない。選択肢が増えすぎるとこの作業が手に負えない負担になる。

・間違いやすくなる。私たちにはさまざまな心理的バイアスがあり、選択肢が少なくじっくり選べるときでさえ間違いをおかしやすい。選択肢が増え複雑さが増すとますます間違いやすくなる。

・間違いの引き起こす心理的な影響が深刻になる。さんざん悩んで決めたならそれなりの見返りを得て満足したいと思う。時間と労力をかけるほど失敗がこたえることになる。

これ以外にも選択についてのさまざまなマイナス面、たとえば私たちが二者択一を避けたがる傾向があることや機会コスト(選択肢が増えるほどあきらめなければならないオプションも増える)と後悔の問題などが書かれています。

 

○サティスファイサーとマキシマイザー

著者によると、意思決定における態度の違いによって私たちは「サティスファイサー(満足人間)」と「マキシマイザー(最大化人間)」の2つのグループに分かれるそうです。サティスファイサーは自分の規準を満たせばまずまずのもので良しとする人たち、マキシマイザーは最高のものでなければダメだとする人たちです。
選択のネガティブな側面はとくにマキシマイザーにとって深刻な問題になるとのこと。

・マキシマイザーは最高を見つけようとすべてのオプションを検討しようとするため、選択肢が増えるほど時間と労力が必要になる。サティスファイサーは自分の規準を満たすものが見つかればそれで手を打つ。

・マキシマイザーはサティスファイサーに比べて後悔にとらわれやすい(もっといいものを発見してしまう...etc)。後悔することで選択に対する満足度が損なわれる。

・マキシマイザーは期待が高くがっかりしやすい。人間にはうれしさに順応する機能があり、しかもそれを過小評価する傾向があるので、期待が高すぎるのはまずい結果になりやすい。

・マキシマイザーは最高を求めるため他のものと比較する。比較することは害にこそなれ、得るものは少ないと考えられる。

・著者らの研究グループによると、マキシマイザーション・スコアが高い人は低いひとに比べて生活満足度・幸福度・楽観度のスコアがいずれも低く、一方で憂うつ度スコアが高かったとのこと。

・あらゆる意思決定でマキシマイザーになる人はいないことから、マキシマイザーかサティスファイサーかを分けるのは、決断においてマキシマイザーになる領域の範囲と数とのこと。

 

○過剰な選択肢がもたらす負担をやわらげる11の方法

1. 選ぶときを選ぶ
何が本当に重要かを見極めて、そこに時間とエネルギー集中させる。それ以外の選択は見送る。

2. 選りすぐるひとではなく、選ぶひとになる
この部分はいまひとつ1との違いがわからなかった・・・。

3. 満足を心がけ、最大化を控える
選択の問題で誰よりも苦しむのはマキシマイザー。サティスファイサーになって「まずまず」で手を打つことで自分の決断に満足していられる。ただし、サティスファイサーになるには、自分にとって「まずまず」の規準が必要となる。

4. 機会コストを機会コストとして考える
機会コストについて考えることは必要な作業だが、機会コストについてじっくり考えると選んだオプションが物足りなく思える。
対策は、ほどほどで考えるのを止める、自分の規準で判断するサティスファイサーになる、選択から手を引く分野を決めてしまう、など。

5. 決断は取り消し不能にする
あとで取り消せると思うと、それに満足しにくくなる。取り消せないと思うと、選んだオプションの評価を引き上げようとさまざまな心理プロセスが働くため。
この効果がとくにはっきりあらわれるのは結婚。いちど決心したら取り消せないのだと覚悟していれば、いまの関係をよりよくすることにエネルギーを注ぎ込むことができる。

6.「感謝の心」を実践する
同じ経験でも、普通はうれしい側面とがっかりする側面がある。こういうときはどちらに目を向けるかによって満足できるかどうかが決まる。

7. 後悔しない
・マキシマイザーではなくサティスファイサーの規準を取り入れる。
・決断にあたって候補とするオプションの数を減らす。
・決断のいい面に感謝して、悪い面ばかりをみてがっかりしない習慣をつける。
・人生がいかに複雑化を思い出すのも役に立つ。ひとつの決断をやり直すだけで、基本的な人格が変わることはないし、いまより人生やキャリアがうまくいっていたはずだと実際には誰にも言えない。

8. 順応を見越す
私たちは良い経験にも悪い経験にも順応する。しかも、事前にはそれを織り込んでいない。順応の失望をやわらげる方法。
・新車を買うとき、最初の感激は二カ月ももたないとわが身に言い聞かせる。
・完璧な品を探してあまり時間を使わないようにする。調査コストが莫大になると選んだ品から得る満足では「減価償却」しきれなくなる。
・最初の感激を思い出してがっかりするのではなく、実際には、それでもじゅうぶんいいことを思い出す。

9. 期待を管理する
経験に対する評価は、期待と比べてどうだったかに大きく影響される。決断の結果にもっと満足したいなら、高い期待をかけすぎないのが近道だ。

10. 他人との比較はほどほどに
他人と比べることで役に立つ情報が得られる反面、たいていの場合は満足度が押し下げられる。比較をほどほどにすればもっと満足できるようになる。

11. 制約を歓迎する術を学ぶ
向き合う選択肢が増えるにしたがい、選択の自由はやがて選択の暴圧となる。ルールや習慣(車に乗ったらシートベルトを締める、ワインは一晩に二杯までなど)に従えば毎度毎度どちらにしようと悩むことはなくなる。こうしたルールを守って時間と注意力を節約し、ルールを適用できない選択や決定について考える時間に振り向ければいい。