ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則

 

ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則

ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則

  • 作者: バーバラ・フレドリクソン,植木理恵,高橋由紀子
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2010/06/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ポジティブ心理学の本です。
ポジティブ感情とはどんなものでどんな役割があるのか、ポジティブ感情がリソースの蓄積や成功につながるという「拡張-形成理論」、上昇と下降をわける分岐点であるポジティブ3対ネガティブ1の比率、どうすればネガティブを抑えボデティブを増やせるのか、といったことが書かれています。

著者のバーバラ・フレドリクソンはノースカロナイナ大学の教授だそうです。この分野では有名な研究者のようで、この本で書かれている拡張-形成理論を提唱したとのこと。

多数の研究を引用するなど研究に基づいた内容なのだと思いますが、あまり学問的な厳密さはないように感じました。
たとえばポジティビティは寿命を延ばすという部分では、HIVに罹った2人のエピソードがメインで、その後に「いくつかの科学的研究によって証明されています。ポジティビティを多く示す人は、そうでない人よりも長生きします。寿命の違いは長いと10年にもなります。」という記述があるだけです。
参考文献リストも(日本語版には)ついていません。

また、この本の題名にもなっている3:1のポジティブ比率については他の研究者から批判があったそうで、著者自身も計算の誤りを認めているそうです(ポジティブ比を増やすのが良いという内容は強固だとしている)。
この本に書いてある内容がどこまで広く受け入れられているか、証拠がそろっているのかやや不明確で、どこまで信頼していいのか判断しにくいところが問題に感じました。

全体的にエピソードが多く読み物的な感じが強いので、比較的短時間で読める読みやすい本だと思います。

 

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ポジティブ心理学の挑戦

 

ポジティブ心理学の挑戦 “幸福

ポジティブ心理学の挑戦 “幸福"から“持続的幸福"へ

 

ポジティブ心理学の本です。
ポジティブ心理学とはどんなものか、従来の心理学とどう違うのか、どんな普及活動をしているのか、といったことが著者自身がポジティブ心理学を研究するようになった経緯と共に書かれています。

著者はペンシルベニア大学の教授でアメリカ心理学会の会長のマーティン・セリグマン。セリグマンは著名な心理学者で学習性無気力の実験が良く知られていますが、ポジティブ心理学の分野でも草分け的存在のようです。

教授の本だけあって、内容は基本的に研究などの証拠に基づいており科学的です。ただ、この分野はまだ発達途上ということもあり、信頼性は盤石ではないようです。
たとえば、抑うつ度を下げ幸福度を上げるとして本書で勧められている「3つの良いことを書くエクササイズ」ですが、良いことを毎日3つ書くと幸せになれるか?によるとその後の研究では効果がまちまちとのことで、まだはっきりと結論が出せる状況ではなさそうです。この本は(断りはありますが)やや楽観的な解釈に片寄っている感はありました。

文章は易しいとは言えないですが、あまり学術的に偏らず一般的読み物として読むことができました。ただ、本文だけで400ページを超えておりかなり分量があります。

内容的には、第1章~第3章がポジティブ心理学の誕生から理論・実践方法までをカバーしており一番重要だと思います。この部分はポジティブ心理学がどういうものでどういったことを目指しているのがわかりやすく書かれており良かったです。
とくに、幸せという指標の問題を指摘して、それに代わりウェルビーイングを人生や社会政策の目標にすべきと書かれている部分は新鮮で読みごたえがありました。

4章以降は、コーチング・教育・軍隊といった場所でのポジティブ心理学の普及活動、達成理論やレジリエンについてなの話などが続きます。ただ、話がいろいろな方向に飛ぶため系統だって書かれているようには思えませんでした。トレーニングもいくつか書かれていますが、概要どまりなので詳細は他の本を読む必要がありそうです。

 

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野菜ジュースは野菜の代わりになるのか

1日あたりに必要な野菜の摂取量は350gと言われます。

しかし、国民健康・栄養調査を見ても日本人の野菜の摂取量は目標に届いていません。350gというのはなかなか厳しい数字です。

 

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この野菜の不足を埋めるのに便利と思えるのが野菜ジュースですが、ジュースでは本物の野菜の代わりにはならないという否定的な意見も目にします。

一人暮らしをしていると手軽に飲める野菜ジュースはすばらしい商品に思えるので、本当のところはどうなのか気になるところです。

そこで少し検索してみたところ、国民生活センターが商品テストを行っているのを見つけました。また、名古屋市消費生活センターも成分分析 を行っています。

 

商品テストの結果は、ビタミンAについては基準を満たす商品が多いものの、食物繊維やビタミンCなど失われてしまう栄養素が多く、全体としては「1日分の野菜」の栄養よりだいぶん少なくなっているとのことです。やはりジュースでは野菜そのものにはかなわないようです・・・。

とはいえ、中身を見ていくとジュースもそんなに悪くはないのではないかという点もあります。

下のグラフは、国民生活センターのレポートから緑黄色野菜120g (1日分の野菜) あたりの栄養量と、野菜ジュース8種 (120ml) の平均値を抜き出し、栄養素等表示基準値 (平均的な日本人の栄養摂取目標値) に対する比率を計算したものです。

 

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 ※Vt.A:ビタミンA、Vt.C:ビタミンC、Vt.E:ビタミンE、Na:ナトリウム、K:カリウム、Ca:カルシウム、Mg:マグネシウム。緑黄色野菜120gのビタンミンEとナトリウムについてはデータなし。

 

グラフを見てわかるように、確かに全体的な栄養という点では野菜ジュースは緑黄色野菜に比べて劣っています。しかし、ビタミンA、カリウム、鉄のように比較的劣化の少ない栄養素もあります。

特にビタミンAは緑黄色野菜からの摂取率が高い栄養素なので、これが失われないというのは大きいと思います (ただし果汁の多い銘柄ではほとんど含まれないのもあり)。

 また、食物繊維、カルシウム、マグネシウムは野菜ジュースになると大きく失われてしまいますが、そもそも緑黄色野菜120gに含まれる量自体が1日の15%前後でそこまで多くありません。

 一方でビタミンCは緑黄色野菜からの摂取率が高く、野菜ジュースにすると激減してしまう栄養素です。120gの緑黄色野菜の30%未満しか含まれない銘柄が半数を超えたとのことで、これは残念な点だと思います。

 

そんなわけで野菜ジュースには確かに欠点があるようです。ただ、それは他の野菜も同じで、例えば緑黄色野菜のにんじんはビタミンCが少ないですし、キャベツ・たまねぎ・じゃがいもなどの淡色野菜はビタミンAを含みません。

結局どんな食品にも長所・短所があるのだと思います。野菜ジュースにすることでビタミンCなど失われてしまう栄養素もありますが、ビタミンAのように劣化の少ない栄養素もありますし、手軽に量をとれるという利点があります。

ジュースだけ飲んでいれば野菜を食べなくてもいいといった過剰な期待をしなければそれなりに良い商品なのではないでしょうか。